アジの下処理|釣った日にやることと三枚おろしまで
アジは釣りやすく、食べても美味しい魚だ。ただし美味しさの大半は、料理の腕前ではなく、釣り場と台所での下処理で決まる。ここでは釣ったアジを持ち帰り、三枚おろしにするまでの手順をまとめる。
釣り場でやること
アジの味を落とす一番の原因は、締めずに放置することだ。生きたまま氷の上に置いたり、バケツで泳がせたまま時間を過ごすと、身に血が回って生臭さの元になる。
20cm前後までの小型のアジなら、氷締めで十分だ。クーラーボックスに海水と氷を入れた「潮氷」を作り、釣れたアジをそこに直接入れる。真水の氷水ではなく海水を使うのは、真水に浸けると身が水を吸って水っぽくなるためだ。
25cmを超えるサイズや、刺身にするつもりの個体は、エラの付け根を刃物で切って血を抜いてから潮氷に入れると、さらに生臭さが減る。
潮氷が用意できない場合は、氷と魚が直接触れないようビニール袋に入れてからクーラーボックスへ。魚が氷焼けして身が白くなるのを防げる。
用意する道具
特別な道具は要らない。家庭にあるもので足りる。
- 包丁(出刃があれば理想だが、よく研いだ三徳包丁でも可)
- まな板
- ウロコ取り(包丁の背でも代用できる)
- キッチンペーパー
- ボウルまたは流水を使える環境
アジは骨が柔らかいので、大きな出刃がなくても捌ける。むしろ切れ味のほうが重要で、切れない包丁は身を潰して食感を悪くする。
手順1:ウロコを取る
流水にあてながら、尾から頭に向かって、包丁の背やウロコ取りで撫でるように削ぐ。アジのウロコは細かく剥がれやすいので力は要らない。
背びれの根元、腹側、頭のすぐ後ろは取り残しやすい。指で撫でてざらつきが残っていないか確かめる。
手順2:ゼイゴを取る
アジ特有の工程がこれだ。尾の付け根から体の中ほどにかけて、側線の上に硬いトゲ状のウロコが並んでいる。これをゼイゴ(稜鱗)と呼ぶ。
硬くて口に残るので、必ず取り除く。尾側から包丁を寝かせて差し入れ、刃を小刻みに前後させながら頭のほうへ削ぎ進める。皮一枚を薄く削ぐイメージで、身まで削らないよう注意する。
両面にあるので、裏返して同じ作業をする。
手順3:頭と内臓を落とす
- 胸びれの後ろから、頭の方へ斜めに包丁を入れる。裏返して同じ角度で入れ、頭を落とす。
- 腹を肛門から頭側へ切り開く。
- 内臓を指か包丁の先でかき出す。
- 背骨に沿って走る血合い(黒っぽい血の塊)を、包丁の先や指の腹で掻き出す。
血合いが残ると生臭さの原因になるので、ここは丁寧にやる価値がある。
手順4:洗って水気を拭く
腹の中を流水でよく洗う。歯ブラシを使うと血合いの残りが落としやすい。
洗い終えたら、キッチンペーパーで水気を徹底的に拭き取る。表面も腹の中も乾かす。
水気を残したままにすると、傷みが早くなり、焼いても揚げても仕上がりが水っぽくなる。ここを省略しないこと。
手順5:三枚おろし
刺身やフライにするなら三枚におろす。塩焼きや煮付けなら、ここまでの状態で調理できる。
- 頭側を右、背を手前にして置き、背側から包丁を入れる。背骨に沿って尾まで浅く切り込みを入れる。
- 同じ線をなぞりながら、少しずつ深く切り進める。背骨に当たる感触を頼りにする。
- 尾の付け根まで切れたら、包丁を寝かせて身を背骨から離す。これで片身が取れる。
- 裏返して同じ手順を繰り返し、二枚目の身を取る。
- 腹骨を薄く削ぎ取る。
- 血合い骨は骨抜きで抜くか、細く切り取る。
一度で切り離そうとせず、浅い切り込みを何度か繰り返すほうが失敗しない。
刺身にする場合の注意
アジにはアニサキスをはじめとする寄生虫が付いていることがある。生食にはリスクが伴う。
アニサキスは内臓に多く寄生し、魚が死んだあと時間の経過とともに筋肉へ移動する。釣ったその日に内臓を取り除くことが、リスクを下げる最も効果的な手段になる。
身を捌いたら、明るい場所で身の表面と内部を目視で確認する。白く細い糸状の虫が見えたら取り除く。
確実に死滅させるには、加熱(中心温度70度以上)か冷凍(マイナス20度で24時間以上)が必要だ。家庭用冷凍庫は温度が足りない場合があるため、生食を選ぶ以上、目視だけではリスクが残ることは理解しておきたい。
皮を引く場合は、頭側の皮を指でつまみ、尾に向かって一気に剥く。アジの皮は手で剥ける。
保存の目安
- 当日中に食べる:三枚おろしにして、キッチンペーパーで包み冷蔵庫へ
- 翌日に食べる:ワタとエラを抜いた状態で、水気を拭いてラップに包み冷蔵
- 数日以上おく:三枚おろしにして水気を拭き、1回分ずつラップで包んで冷凍
冷凍する場合は、空気に触れる面積を減らすほど劣化が遅い。ラップでぴったり包んだうえで保存袋に入れ、空気を抜く。
干物にするのも保存としては有効で、開いて塩水に漬けてから一晩干せばよい。
ここまでできたら
下処理さえきちんとできていれば、あとはどう料理しても美味しく食べられる。塩焼き、フライ、なめろう、南蛮漬け、刺身。アジは応用が利く魚だ。