釣った魚の持ち帰り方|潮氷の作り方と締め方の使い分け
釣った魚が美味しいかどうかは、料理より前の段階でほぼ決まっている。同じ場所で同じ日に釣れた魚でも、持ち帰り方が違うだけで味は明確に変わる。ここでは釣り場から自宅の台所までの扱い方をまとめる。特別な道具はほとんど要らない。
味の大半は持ち帰り方で決まる
魚は死んだ瞬間から劣化が始まる。劣化を進めるのは主に温度と、身に残った血だ。この2つを釣り場で押さえられるかどうかが分かれ目になる。
逆にここを外すと、あとから取り返す方法はない。どれだけ丁寧に捌いても、どれだけ良い調味料を使っても、生臭さは消えない。「釣った魚はスーパーの魚より美味しい」と言われるのは、この工程を自分で管理できるからだ。管理しなければ、むしろスーパーの魚に負ける。
用意するもの
- クーラーボックス
- 氷(クーラー容量の3分の1程度)
- 海水を汲むためのバケツ(ロープ付きの水汲みバケツ)
- ナイフかハサミ(血抜き用。小型のもので足りる)
- ビニール袋またはジップ袋
- タオル
クーラーボックスは断熱材で保冷力が変わる。安い発泡スチロールのものは軽くて手軽だが、夏の日帰りだと氷が持たないことがある。発泡ウレタンの中価格帯なら、朝から夕方までは問題なく持つ。真空断熱パネルの高価格帯は泊まりがけや遠征向けで、堤防釣りには過剰だ。
サイズは、アジやサバなど中小型を狙うなら10〜15リットルで足りる。青物や大型を狙う可能性があるなら25リットル以上を選ぶ。
潮氷を作る
潮氷(しおごおり)とは、海水と氷を混ぜてシャーベット状にしたものだ。これが釣り場での基本になる。
真水の氷水ではなく海水を使う理由は2つある。
- 真水に浸けると魚が水を吸い、身が水っぽくなって旨味も流れ出す
- 海水は塩分のぶん凍る温度が低く(およそマイナス1.8度)、真水の氷水より低い温度まで冷やせる
作るのは釣りを始める前がいい。魚が釣れてから慌てて作ると、その間に魚が弱って温度も上がる。到着したらまず海水を汲み、氷を入れて冷やしておく。
氷が溶けて薄まってきたら海水を足す。逆に海水ばかりで氷が少ないと、ただの生ぬるい水になってしまう。シャーベット状を保つのが目安。
締め方は魚のサイズで決める
「締める」というと難しく聞こえるが、要は魚を早く確実に死なせて、身に血と熱を残さないようにすることだ。やり方はサイズで使い分ける。
- 20cm前後まで(豆アジ、小サバ、イワシなど):氷締め。潮氷にそのまま入れるだけでいい
- 25cm以上、または刺身にするつもりの魚:血抜きをしてから潮氷へ
- 大型の青物や高級魚:血抜きに加えて神経締め
小型の魚をわざわざ一匹ずつ血抜きする必要はない。数が多いうえ、血の量も少ないので、潮氷に放り込んで急冷するほうが結果的に鮮度が保てる。
神経締めは、脊椎の中を通る神経にワイヤーを差し込んで破壊する方法だ。死後硬直を遅らせられるが、手間と道具が要る。堤防で釣れる中小型魚に対しては、労力に見合わないことが多い。まずは血抜きを確実にやるほうが効果が大きい。
血抜きのやり方
- 魚のエラ蓋を持ち上げる。
- エラの付け根(背骨側)に刃先を差し入れて切る。太い血管が通っているので、うまく切れれば血が出てくる。
- 海水を張ったバケツに数分入れておく。心臓がまだ動いているうちのほうが血は抜けやすい。
- 血が抜けたら、潮氷へ移す。
血の混じった水にそのまま入れっぱなしにしないこと。血抜き用のバケツと、冷やすための潮氷は分けるのが基本。
うまく切れているかは、水が赤く染まるかどうかで分かる。染まらない場合は切る位置が浅いか、場所がずれている。
冷やしすぎと氷焼けを防ぐ
冷やすことは重要だが、やり方を間違えると別の失敗が起きる。
氷が身に直接触れ続けると、その部分だけが凍って白く変色する。これを氷焼けという。食べられなくはないが、食感が悪くなり見た目も落ちる。潮氷の中では水がクッションになるので起きにくいが、水を切って氷の上に直接置くと起きる。
対策は単純で、ビニール袋やジップ袋に入れてから氷の上に置けばいい。袋越しでも冷気は十分に伝わる。
潮氷に入れっぱなしにしない
意外と知られていないのがこれだ。潮氷は急速に冷やすためのもので、何時間も浸けておくものではない。
長時間浸けたままにすると、身が水を吸って水っぽくなる。目が白く濁ってくるのも浸けすぎのサインだ。
目安として、しっかり冷えたら(30分から1時間程度)水から上げ、ビニール袋に入れてクーラーボックスの氷の上に戻す。これで冷たさは保ったまま、水を吸うのを止められる。
釣りに集中していると忘れがちなので、クーラーを開けたついでに確認する癖をつけておくといい。
内臓は釣り場で抜くべきか
鮮度と寄生虫の観点だけを見れば、内臓は早く抜くほど良い。アニサキスは魚が死ぬと内臓から筋肉へ移動してくるので、釣り場で処理できるならそれに越したことはない。
ただし、釣り場での魚の処理を禁止している場所は多い。海に内臓を捨てる行為も、場所によってはマナー違反とされる。事前にその釣り場のルールを確認すること。
現実的には、処理が禁止されている場所も多く、水場や作業スペースの確保も難しい。移動時間が1時間程度なら、しっかり冷やして持ち帰り、家に着いてすぐ処理するので十分間に合う。
移動に何時間もかかるなら、処理が許されている場所で内臓だけでも抜いておく価値はある。
帰り道の管理
- クーラーボックスは直射日光に当てない。夏の車のトランクは非常に高温になる
- 可能なら車内の日陰に置く
- フタの開け閉めを減らす。開けるたびに冷気が逃げる
- 寄り道はしない。買い物などで車内に長時間置くのは避ける
せっかく釣り場で丁寧に冷やしても、帰りの2時間で台無しになることがある。特に夏場は、ここが一番の落とし穴になる。
家に着いてから
- クーラーボックスから出し、まだ処理していなければ内臓とエラを抜く。
- 腹の中を流水でよく洗う。
- キッチンペーパーで水気を徹底的に拭き取る。
- その日に食べる分と、冷凍する分に分ける。
魚種ごとの詳しい下処理は、アジの下処理とサバの下処理とアニサキス対策にまとめてある。生で食べるつもりならサバの記事は先に読んでおいてほしい。
クーラーボックスの手入れ
使ったあとの手入れを省くと、次の釣行で魚に臭いが移る。
- 中性洗剤で洗い、しっかりすすぐ
- 完全に乾かす。水気が残るとカビと臭いの原因になる
- 保管はフタを開けた状態で
- 臭いが取れないときは、重曹を溶かした水を張って一晩置く
パッキンの溝や水抜き栓のまわりは汚れが残りやすいので、意識して洗う。
まとめ
持ち帰りで押さえるべき点は4つだけだ。釣る前に潮氷を作っておく。サイズに応じて締める。しっかり冷えたら水から上げて袋に入れる。帰り道も冷やし続ける。
道具もほとんど増えない。バケツとナイフとビニール袋があれば始められる。これだけで、同じ魚が別物になる。