干物の作り方|立て塩の濃度と干し時間の目安
干物は保存食であると同時に、魚を美味しくする調理法でもある。水分が抜けて旨味が凝縮し、生のままでは出ない香りが立つ。作り方そのものは単純で、塩水に漬けて干すだけだ。仕上がりを分けるのは、塩の濃度と漬け時間、そして干し上がりの見極めの3つになる。
干物に向く魚
小型から中型の、脂が乗りすぎていない魚が扱いやすい。
- アジ:干物の定番。20cm前後がちょうどいい
- イワシ:手開きにしてそのまま干せる。小型なので乾きが速い
- サバ:脂が多いので塩をやや強めに、干し時間は短めに
- カマス・キス・ハタハタ:身が薄く乾きやすい
逆に、身の厚い大型魚は中心まで乾くのに時間がかかり、表面だけ乾いて中が生という状態になりやすい。慣れるまでは20cm前後の魚がいい。
釣れすぎて食べきれない日にこそ向く調理法でもある。冷凍と違って味が変わるので、同じ魚が続いても飽きにくい。
手順1:開く
手順2:塩をあてる
塩のあて方には、塩水に漬ける「立て塩」と、直接ふりかける「振り塩」がある。干物では立て塩をすすめたい。
- 立て塩:塩水に漬ける。全体に均一に入る。時間で濃さを調整できる
- 振り塩:塩を直接ふる。手軽だがムラが出やすく、部分的に塩辛くなる
塩水の濃度は8〜10%を基本にする。水1リットルに対して塩80〜100g。海水がおよそ3%なので、それよりかなり濃い。
- 20cm前後のアジ・イワシ:30〜40分
- サバなど脂の多い魚:40〜60分(塩は10%寄りに)
- ごく小型の魚:20分程度
迷ったら短めにする。塩が薄ければ食べるときに足せるが、入れすぎた塩は抜けない。
漬けたあとは真水でさっと洗い流し、すぐ水気を拭く。表面に塩水が残ったまま干すと、乾いたときに白い塩が浮いて塩辛くなる。
みりんや醤油を塩水に加えれば、みりん干しや醤油干しになる。基本の立て塩ができるようになってから試すといい。
手順3:干す
干す条件で大事なのは、気温よりも風と湿度だ。風が当たれば表面の水分が連続して飛んでいく。逆に無風の場所では、気温が高くても乾きが進まないまま傷みだけが進む。
- 水気をしっかり拭く。ここが甘いと乾き始めるまでに時間がかかる。
- 干し網やザルに、身を上(皮を下)にして並べる。
- 魚どうしを重ねない。触れている面は乾かない。
- 風通しのよい日陰に吊るす。直射日光は脂が酸化するので避ける。
干し時間の目安は、涼しい時期の屋外で半日から一晩。冬なら一晩、春秋なら3〜5時間ほどで様子を見はじめる。
夏場の屋外干しは避ける。気温が高いと乾くより先に傷む。夏は後述の冷蔵庫干しに切り替える。
屋外に出す以上、虫と鳥と猫の対策は必須になる。網戸状の干し網を使えばまとめて解決する。ベランダに吊るせるタイプが扱いやすい。
干し上がりの見極め
時間ではなく、状態で判断する。
- 表面がさらりと乾き、触っても手に水がつかない
- 身にうっすら透明感とツヤが出る
- 指で押すと弾力があり、身が締まっている
- 皮がぴんと張っている
干しすぎるとカチカチになって、焼いてもぱさつく。「表面は乾いたが中はしっとり」が目標地点だ。一夜干しと呼ばれる状態がこれにあたる。
完全に乾かした固い干物(素干し)は保存性が高いが、家庭で作る干物は一夜干しの含水量で止めておくほうが美味しく食べられる。
室内で干す・冷蔵庫で干す
ベランダがない、夏で外に出せない、虫が気になる。そういう場合は室内でも作れる。
- 冷蔵庫干し:バットに網を敷いて魚を並べ、ラップをせず冷蔵庫へ。一晩から24時間。冷蔵庫内は低湿度なので、ゆっくり確実に乾く
- 脱水シート:市販の脱水シートで包んで冷蔵庫に入れる。半日ほどで干物に近い状態になる
- 扇風機:室内のザルに並べ、弱風を当てる。数時間で表面が乾く
特に冷蔵庫干しは、低温を保ったまま乾かせるので夏場でも失敗しない。手間も「入れて放置」だけで済む。屋外干しより気楽なので、最初の一枚はこの方法で試すのがいい。
焼き方と保存
干物は身のほうから先に焼く。身から焼いて8割ほど火を通し、返して皮目を仕上げると、身が乾きすぎず皮が香ばしくなる。
生の魚より水分が少ないぶん火の通りが速い。焦げやすいので、火力は中火以下にする。
保存の目安は次のとおり。
- 冷蔵:2〜3日
- 冷凍:1ヶ月程度
冷凍するときは1枚ずつラップで包み、保存袋に入れて空気を抜く。焼くときは解凍せず、凍ったまま弱めの火で焼いたほうがぱさつかない。
保存の詳しい考え方は釣った魚の冷凍と保存にまとめてある。
うまくいかないときは
- 塩辛すぎた:塩水が濃いか漬けすぎ。次回は濃度8%・時間を10分短く
- 味がぼやける:塩が薄い。または洗いすぎ。漬けたあとの水洗いは「さっと」でよい
- 生臭い:血合いか内臓の残り。開いたあとの掃除を丁寧に
- 表面だけ乾いて中が生:身が厚い、または無風。開きを薄くするか風を当てる
- ぱさぱさになった:干しすぎ。次回は半分の時間で一度触って確認する
- 白い粉が浮いた:塩水を洗い流していない
最初の数枚は、同じ魚を違う時間で干して食べ比べるのが早い。自分の家の環境に合う時間が分かれば、あとは再現するだけになる。