刺身の切り方|平造りとそぎ造りの使い分け
刺身は切り方で味が変わる。同じ魚、同じ鮮度でも、断面が潰れているかどうかで舌触りがまるで違う。押さずに引く。これだけ守れば、家庭でも十分に美味しい刺身になる。
押して切らない
刺身の切り方でいちばん大事なのはここだ。包丁を前後に往復させたり、上から押し付けて切ってはいけない。
魚の身は繊維が繊細で、押されると潰れる。潰れた断面は光を乱反射してくすみ、舌触りもざらつく。
- 包丁の刃元を身に当てる。
- 手前に引きながら、刃全体を使って切り下ろす。
- 一度で切り離す。往復させない。
柳刃包丁が長いのはこのためだ。刃渡りが長いほど、一度の引きで切り切れる。柳刃がなければ、家にある包丁でいちばん長いものを使えばよい。三徳でも、押さずに引けばかなり違う。
そして前提として、包丁が切れること。研ぎ方は出刃包丁の選び方と研ぎ方にまとめてある。
柵の置き方
三枚におろして皮を引いた身(柵)を、まな板の手前側に置く。
- 厚みのある側を奥、薄い側を手前にする
- 皮があった面を上に、血合いが手前側に来るよう置くと切りやすい
- まな板の右端に寄せると、切った身をそのまま右へ送れる
身を切るたびに包丁の腹で右へ送り、並べていく。こうすると盛り付けのときに順番が崩れない。
皮の引き方はスズキの下処理に図解つきでまとめてある。
平造り
いちばん基本の切り方で、厚みのある身に向く。アジ、ブリ、ハマチ、サバなど。
- 包丁を身に対して垂直に立てる。
- 刃元を当て、手前に引きながら切り下ろす。
- 切れたら包丁の腹で身を右へ送る。
厚さの目安は7〜10mm。脂の乗った魚は厚めに、淡白な白身は薄めにすると食べやすい。
身の繊維に対して直角に切ると、口の中でほろりとほどける。柵の向きを確認してから切りはじめる。
そぎ造り
包丁を寝かせて、そぐように切る。身の薄い魚や、身の締まった白身に向く。タイ、スズキ、ヒラメなど。
- 包丁を左に傾け、30〜45度ほど寝かせる。
- 刃元を当て、身の左端から手前に引きながらそぐ。
- 切り離したら、左手で身を返して器に並べる。
断面が広く取れるので、薄くても食べごたえが出る。歯ごたえの強い白身は、この切り方のほうが噛み切りやすい。
極端に薄くそいで皿の模様が透けるようにしたものが薄造りで、フグやヒラメで使われる。よく切れる包丁でないと身が裂ける。
魚別の向き
- アジ:平造り。小型は皮を手で引いてから
- サバ:しめサバにして平造り。生食は冷凍が前提
- タイ:そぎ造り。皮つきなら松皮造り
- スズキ:そぎ造り。夏場は氷水で締める洗いも
- ブリ・ハマチ:平造り。脂が多いので厚め
- ニジマスなど淡水魚:生食にしない
脂の多い魚は厚く、締まった白身は薄く。これだけ覚えておけば大きく外さない。
盛り付け
難しく考えなくてよい。押さえるのは3点だけだ。
- 奥を高く、手前を低く。立体感が出る
- 左から右へ、少しずつ重ねて並べる
- 大葉や大根のツマを奥に置き、身をもたせかける
皿は身より一回り大きいものを選び、余白を残す。詰め込むと見た目が重くなる。
切った刺身は時間とともに水分が出るので、食べる直前に切って盛るのがいちばんうまい。
生食の前提
刺身にするかどうかは、切り方の前に鮮度と寄生虫のリスクで決まる。
- 釣ったその日に内臓を抜き、冷やして持ち帰った魚であること
- アニサキスのリスクを理解していること(サバ・アジ・イワシ・ブリなど)
- 淡水魚は生食しない
アニサキスの見分け方と対処はサバの下処理とアニサキス対策、淡水魚のリスクは管理釣り場の魚の持ち帰り方にまとめてある。
迷ったら加熱する。加熱料理でも釣った魚は十分に美味しい。